士郎正宗さんの造語

やじうまWatchの2005年3月22日分において、"「ハッカー」よりわかりやすい、犯罪者を指す言葉「電賊」誕生"という題目でもって、

18日にスラッシュドットで公開されたトピックに「電賊が侵入」とあって目を引いた。「電賊」とは「クラッカー」を指す言葉のようだ。中国発祥だという指摘もあるんだけれど、調べてみてもよくわからなかった。出所はともかく、漢字2文字とシンプルな上、わかりやすい言葉だ。「ハッカー」で広まっちゃったから今さら巻き返しは難しいかもしれないけどねぇ。

と書かれていたが、2005年3月23日分において、

オタクの道は広く、その上険しい。筆者はそれなりに押さえているつもりではいたのだけれど、まだまだ全然足らない。「電賊」について、読者様のHiroseさんよりメールでありがたいご指摘をいただいた。マンガの名作「攻殻機動隊」に出てくる言葉だそうです。

と補足されていた。実際「攻殻機動隊2」の序盤(ページ数表記ないので参照しにくい…)において使用されている。全然広まっているような語ではないので、しょうがないような。そもそもスラッシュドットにおいて使われた"電賊"が「攻殻機動隊2」から来たものかどうか確証はないし。


士郎正宗さんは基本的に造語大好きなようで、作中には無数に造語があって広まったのもそうでないのもいろいろあるわけだけれど、彼の作品の影響で一番広まった語といえば、"(熱)光学迷彩"という語ではないかと思う。ググるさんで見ると、英語圏でも(たぶん)東大の研究発表以降、"optical camouflage"という語が結構普及しているように思う。語感としては"adaptive camouflage"とかの方が正しいのかもしれないけれど…。

もっと細かく言うと作中の"光学迷彩"と"adaptive camouflage"とか作中の"光学迷彩"と東大の研究発表での"optical camouflage"は原理的に別物を指している、という向きもあるのであろうけれど、まああんまり気にしない。元々説明がちゃんとされてるわけではなく、割と意味不明であるし。

"電脳"というのも結構ヒットする語ではあるけれど、攻殻系の作品に関する文中以外で、作中で使用される意味で使われることはほとんどない。普通は単に"コンピュータ"の意味で使われてるようだ。台湾では"電腦"というらしいし。一番は"光学迷彩"かな、と。

ちなみに自分は仙術超攻殻ORIONの"念度"とか"韻度"という造語が好き。やっぱり意味不明ではあるんだけれど。

仙術超攻殻オリオン (Comicborne)

仙術超攻殻オリオン (Comicborne)

追記

えーと、"光学迷彩"という単語が本当に「攻殻機動隊」が初出であるということも、英語圏での、"optical camouflage"という単語の普及が東大の研究のせいであるということも、ちゃんと調査したわけではなくて、まったくもって「たぶん」の話ですので。
攻殻機動隊2」を読み返してみると、実は当の"電賊"が使われているページの欄外に「ハッカーの侵入を許す恐れが〜」とか書いてあったりして、ちょっとおもしろい。